一生このミュージカルを観たい

演劇部に所属していた。その頃、いくつか地元の小劇場の舞台を定期的に見ていた。ただ、ごく一部の劇団や脚本家を除いてあまり好きになれなかった。

小劇場演劇の脚本家と役者は下ネタを書かないと/言わないと死ぬ病気でも患っているのだろうか?下ネタを面白いと感じられない人間なので、自己満足のような脚本と演出を見るたびに表情を失ってしまった。

でもときどき、めちゃくちゃ面白くて表情を失う瞬間がない芝居や演出があって、そういった劇団や役者さんが好きだった。

 

二次元の推しが動くのを見るために初めて2.5次元の舞台を観て頭を殴られるような衝撃を受けてから、舞台が好きになった。商業演劇ならこんなに面白いんだと知った。それ以来、世界最高の推しが舞台に定期的に出てくれるので推しを見るために毎週末劇場に住んでいるレベルで張り付いたり、いろんな2.5次元舞台を観たり、それ以外の舞台も観たりしてきた。

普段はJPEGの推しが動いて呼吸してる2.5次元もめちゃくちゃ楽しい。たまにドーパミンかなにかで脳が焼き切れてるような感じになってしまうのはちょっと困っているが。

世界最高の推しは舞台でも最高の芝居をしてくれるので、それを浴びるのもとても楽しい。くるくると変わる表情、感情に合わせて揺れる声、毎日その日その時を役に没入して生きている推しを生で感じられるのってなんて素晴らしいんだろうと思う。舞台を見るたびに収録とかで機材を通すと消えてしまう情報量の何と多いことなんだろう、と驚く。アフレコ現場ってなんて贅沢な稽古場なんだろうか、と心を馳せる。

 

新参者ではあるが、自分の中で芝居や演出の好みとかが言語化できるくらいには、それなりの回数と種類の舞台を観たと思っている。

わたしがこれまでに観た中で、全人類に胸を張ってオススメできる、最高のミュージカル、ダディ・ロング・レッグズの話をする。

人生で4回目?記憶が曖昧だ。

2022年版は大阪公演の千秋楽のチケットをかろうじて確保して観た。わたしの誕生日なので自分に世界で一番のプレゼントをした。

 

最初はわたしの推しが出ていたのでミュージカルしている推しを見たくて行った。

2017年、中日劇場の千秋楽だったと思う。

初めての中日劇場。名古屋のお友達と雑談してから劇場入り。

それほど近い席ではなかった。FC先行だけど、まあ干されなのでしょうがない。幕が降りていなくて、舞台セットが丸見えだった。開演直前に生演奏の最終調整の音が聞こえた。

暗転。

一幕ですでに泣いた。二幕で自分で引くほど号泣した。初見の舞台だが?

 

推しの声と歌が最高なのは言うまでもないけど、相手役の方もおそろしく芝居がうまい。(あとから詳しく調べたが、超有名な方だった。納得)

終わって劇場を出ようとしたらすごい行列ができてた。ミーハーなので行列に並んでいたら推しは出てこなかった*1が相手役の方が出てきて全員とハイタッチしてくれた。やった〜。最高の芝居ありがと〜。

 

ダディ・ロング・レッグズの好きなところを書く。

二人芝居なのだが、すべてが過不足なくおさまっている脚本と演出の妙。二人の美しい歌声のハーモニーで奏でられる印象的なフレーズ、そして時には重ねて、時にはすれ違うリプライズ。*2何より一番好きなのは場面転換の素晴らしい巧みさだ。わたしは長い暗転がしぬほど嫌い*3なので、暗転が長いとキレてしまう病気を患っている。休憩時間を抜いて上演時間が2時間半くらいあるのだが、場面転換がスムーズすぎて全く、一瞬たりともストレスを感じなかった。

 

ちなみにこのミュージカルの脚本・演出はジョン・ケアードなのだが、彼が千と千尋の舞台を手がけると聞いたときにはここ数ヶ月で一番笑顔になったし、絶対にどんな手段を使ってでも舞台版千と千尋を観ると決意したし、実際あらゆる手段で合法的にチケットをとって満足するまで観た。ダディで培われたジョン・ケアードへの熱い信頼*4がやはり裏切られなかったので推し作家認定するしかねえな、と思った。推します。ジェーン・エアも絶対に観るぞ。

場面転換の暗転が嫌いなやつはジョン・ケアードを推せ。

 

2022年版のダディ・ロング・レッグズ。

10周年だそうだ。めでたい。わたしは5周年だね。めでたい。

10年目にして初めてキャスト変更があった。*5

もねちゃんは千と千尋で初めてちゃんとお芝居を見た。とても上手だったし、歌がうまいことも話に聞いて知っていたので、推しは出ないけど絶対に見たいと思った。

無事に観られて本当に良かった。

表情はジルーシャなのに、声だけがトミーやミセス・リペットに急に変わる。びっくりした。何事?*6

手紙を受け取るくだりはとくに面白かったなあ。

あと農場の屋根裏の部屋の窓を開けてつっかい棒をする。そして舞台上を動き回った後、アシナガグモをつまんで窓の外に放すのだが、この時完全に最初の窓の位置に手を差し出していて、この人は「ここに窓が存在している」んだと鳥肌が立った。千と千尋でも車に乗りながら神様の祠を見つめるシーンがすごい好きだったけど。

 

2020年版ではコロナ対策の結果としてラストのキスシーンはハグになったけど、2022年版はキスシーンに戻ったらしい。*7

いくつかセリフが増えたなと思った。彼女の家系図を遡れば尻尾の長いエリートの猿がいるんだわ、というセリフは「知らなかった」の歌の前に在っていいんだろうか?ここだけ釈然としない。

もねちゃんのジルーシャは18歳らしくて、おさなくて愛らしかった。*8

歌も上手いし、表情も素敵だし、芝居も上手いし、ちっちゃくて可愛いし、最高だった。いつもなかなかじっくり観られないジャーヴィスもめちゃくちゃちゃんと見た。*9

あの人、照明の角度と自分の顔にできてる陰影までわかってんじゃないかと思う芝居する。表情が派手じゃないけどすごく豊かで眉の動きひとつでたくさんのことが伝わってくるお芝居を見るたびに好きだなあと思う。*10

 

もねちゃんのジルーシャもとても素敵だったし、ダディ・ロング・レッグズは演者だけでなく脚本も演出も歌も音楽も舞台装置も最高のミュージカルなので、推しがいなくても泣いたし笑ったし最高に幸せな気持ちにしてもらった。

たくさん感動で泣いたけど、二人が手を繋いで笑顔ではけた後に、推しで見たかったなあと思ってちょっと泣いた。*11

推しのジルーシャは表情が苛烈で気持ちが歌に全部乗っかって客席に飛んでくる。ダディに向けたセリフなのに、わたしたちにぶつけられる推しの歌声が好きだ。と改めて思った。

次のダディは推しがやるんだろうか。やらないんだろうか。

2022年版の円盤も欲しいけど。*12

 

再演のたびに思うけどダディは公演期間が短すぎる。ダディ・ロング・レッグズが大好きなので何回も見たいけど、連日マチソワして浴びるのは余韻がもったいなくて全通できずにいる。1ヶ月くらい公演をしてもらって、1週間に一度観劇して4回見たい。なんなら四季みたいに一年中どこかの劇場でやっていてほしいレベルで好き。

 

演者の演技力も歌唱力も最高だし、初見でもわかりやすいセリフ、脚本、巧みな演出、愛おしいキャラクター、何をとっても一流のこのミュージカルがきっとこれからも一生好きだ。

キャスト変更してもいいから絶対に毎回芝居も歌も上手い人連れてきてほしい。多分連れてきてくれるはず。

もしこれを読んでくれた人がいたら、一緒に次のダディ・ロング・レッグズを観に行こう。心が豊かになるから。

*1:そんな気はしてた。推し、そういう人

*2:ミュージカルのリプライズ大好き芸人

*3:集中が途切れるから

*4:千と千尋も場面転換が天才すぎて毎回笑顔になった。やっぱ最高だな!

*5:このキャスティング、オーディションじゃないのでは?と思って笑った

*6:推しは顔も完全にトミーとミセス・リペットになっていたので(そういうところも好き)

*7:上手だったので実際のところはわからん

*8:推し、18歳には正直見えないけど、22歳にはめちゃくちゃ見える。強くて逞しいお姉さんに成長する推し、最高

*9:推しがいると推ししか見えない

*10:まあ、推しには今のところしてないんだけど。推してる人は幸せだろうなあ。

*11:推し、出産お疲れ様でした。無事に産んでくれてありがとう

*12:出る気配がない