燦然と輝く男を見た
この世で最も素晴らしいミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』の中で推しが
「知らなかったヘンリー8世が何度も結婚したの」
と歌っていた。
ヘンリー8世……?聞き覚えがあるッ……!
そう、思い出した。
彩の国シェイクスピア・シリーズ
『ヘンリー八世』
タイミングよく、今年再演しているではないか!これは行くしかない。
おっさんずラブ -in the sky-の吉田鋼太郎氏の怪演*1を見てから一生に一度は生で吉田鋼太郎の芝居が見たいと思っていたので氏の舞台を気にかけるようにしていたのが良かった。
trick*2育ちのオタクは、氏とセットで阿部寛も見れるなんてお得だな〜♫と思いながらチケットを取り、劇場に行った。
客層は2.5ともせんちひとも違う感じだった。せんちひは脚本演出が天才だし演者も良かったけど客層だけが本当に良くなかった*3ので、そこは安心した。
結論だけ書くと、シェイクスピアとはウマが合わないなと再確認した。あと吉田鋼太郎がやっぱり化け物のように芝居が上手いことを見せつけられた。
吉田鋼太郎、囁く声でも感情的に喚き散らす時でも滑舌が良くて一言一句セリフが聞き取れるのが、基本的なスキルだけどあまりにもクオリティが高くて最高だった。*4
あと二幕から顕著になった気がするが、おそらく氏の演出による「ここは笑いどころですよ」というメッセージが露骨になってかなり軽妙な仕上がりになっていて、堅苦しい古典演劇ではなくなっていき*5見やすくて良かった。
なんでシェイクスピアを高尚なものとして祭り上げるんだろうね。いや多分絵画素人がピカソの良さがわからないように、それまでの演劇史を踏まえてシェイクスピアを理解するとbefore・シェイクスピアととafter・シェイクスピアのような、時代が変わってしまうような、大きな革命と呼べるような何かがあるからこそ、偉大なんだと思う。
吉田鋼太郎の話がしたくて記事を書いているので吉田鋼太郎の話をする。
演者がマイクをつけている演劇を見慣れてしまっていたので、幕が上がって演者がマイクをつけていないのを見てびっくりした。
めちゃくちゃ大きな箱ではなかったとはいえ、それなりの箱の後方席に座っていたわたしでもほとんどのセリフが聞こえたので、演者の基礎スキルがみんな高いんだな〜と思いながら見た。ただその中でも吉田鋼太郎が別格すぎて本当に目が飛び出るかと思った。なんで囁いてるのにこんなにクリアに聞こえるんだい?マイクもないのに?
芝居も「芝居がかった芝居」をするシーンでもくさくない。やっている仕草なんか明らかにもう芝居のための芝居なんだけど、妙な説得力があって、「いやそうはならんやろ」「なっとるやろがい!」と脳内で自分が殴り合いをする事態になった。これを凡人がやるともう目も当てられないが、吉田鋼太郎の演技力で全てを納得"させられて"しまう。おっさんずラブ -in the sky-の再来だ。面白くなってしまってずっとにやにやしていた。
正直脚本自体は全く刺さらなくて(ザ・シェイクスピア的だった)本が面白くなくても、登場人物の気持ちに入り込めなくても、舞台の上にいるだけで面白い、目が離せない、圧倒的な存在感に目を奪われる、そんな吉田鋼太郎という男を満喫した。
わたしは芝居に関してはほぼ素人だが、吉田鋼太郎はやっぱりとてつもなく演技が上手いのではないだろうか。芸能界にはこんな怪物がいるのか、と圧倒されながら帰路についた。
芝居が抜群に上手い人間、声優をさせても上手い説を唱えている*6*7ので、吉田鋼太郎氏が何かしらのゲスト声優になってくれないかな、と思っている。
これからも吉田鋼太郎氏の芝居は定期的に観たいなと思った。もしまだ観たことがないなら、一刻も早く観に行ってください。
阿部寛はデカかった。芝居もしっかりしてたと思うけど声が低すぎて時々聞き取れなかった。聴力がオワリ。あとやっぱり吉田鋼太郎に目を奪われすぎてだめ。他の何も見えない。吉田鋼太郎しか見えない。恋かも。